新しい磁性半導体CdMnGeP2

G.A. Medvedkin, 石橋隆幸, 佐藤勝昭


磁性半導体とは

  • 磁性[1]と半導体性[2]を兼ね備えた物質の総称

  • 磁性半導体の何が面白いの?

  • 磁性の原因となっている原子磁石(原子の磁気モーメント)と、電気伝導の原因になっている伝導電子のもつミニ磁石(スピン磁気モーメント)の間に互いにそろえ合う力(交換相互作用)が働く
  • これにより、巨大磁気抵抗効果(GMR)、巨大磁気光学効果、電気による磁性の制御などに道が開ける

  • 磁性半導体は何の役に立つの?

  • 大きな磁気抵抗効果 - 高感度再生用GMRヘッド、固体磁気メモリ(MRAM)
  • 大きな磁気光学効果 - ファイバ通信用光アイソレータ
  • 伝導電子スピンと原子磁気モーメントの相互作用 - コイルを使わず電気や光で磁気をコントロール
  • バンドギャップのmagnetic red shift - 磁界で色が変わる材料

  • いままで実用例はあるの?

  • 電気と磁気の関わりを使ったデバイス - 提案はあるが、低温がネックとなって実用化せず。 - CdCr2Se4, EuSなどは結晶、薄膜作製が困難 - GaAs:MnなどはMnが入りづらい
  • 光と磁気の関わりを使ったデバイス - Cd1-xMnxTe、Cd1-x-yHgxMnyTe ではファイバアンプ励起光源用光アイソレータとして実用化

  • 新磁性半導体ってどんな物質

  • 2燐化カドミウム・ゲルマニウム(CdGeP2)を母体とし、
     マンガン(Mn)を高濃度に添加した物質
  • 製造方法:母体単結晶にMnを蒸着し熱拡散
    - 具体的な製法については特許申請準備中
  • 結晶構造は?
    - カルコパイライト構造 - 表面のごく薄い層(数原子層)をのぞく
  • Mn濃度は?
    - 表面層では、Cd/Mn=0.53 - 平均:実効層厚0.5mmにおける平均Cd/Mn=0.2
  • キュリー温度は?
    - 320K=47度C(室温で強磁性)

  • 得られた物質の性質は?

  • Mn添加層も半導体:
    - バンドギャップが存在。ワイド化(1.72 →3.24eV) [ 蛍光スペクトルの測定による]
  • Mn 添加層は強磁性体:
    - 室温で磁気ヒステリシスを観測( 磁化率計による)
    - Mn 原子あたりのモーメント:1.03μB
    - 磁化の温度変化からTc=320Kと決定
    - 表面に磁化が存在( 磁気力顕微鏡(MFM) による)
  • 磁性半導体特有の磁気光学効果:
    - CdGeP2のバンドギャップ1.75eVで磁気カー楕円率がピーク値0.14度
    - →ファラデー回転に換算すると5.2 ×104 度/cm

  • 単結晶に拡散する以外に作る方法はないの?

  • はい、多結晶体の粉体にMnを固相反応で拡散しても作れます。
  • CdMnGeP2粉末試料のキュリー温度は310-320Kです。

  • 強磁性不純物のせいで室温強磁性が現れたのでは?

  • X線回折で見る限りは、全ての回折線はカルコパイライト構造として指数付けできます。
  • 非常にわずかな異相がありますが、GePのもので、強磁性のMnP(Tc=290K)やMn3Ge(Tc=920K), Mn5Ge3(Tc=296K)の回折線は見られません。

  • 他のII-IV-V2化合物でも室温強磁性になりますか?

  • はい、ZnGeP2やCdSnP2でも室温強磁性が見られます!
  • II-IV-V:Mnに共通の現象です。

  • これから調べることは?

  • 電気特性を測定すること - n 型?p型? - 導電率は?、キャリア農度は?
  • 磁気抵抗効果を測定すること
  • 吸収端の磁気シフトを調べること

  • 磁性半導体の歴史

  • 1960年代末
    - CdCr2Se4(spinel構造:Tc=130K), EuS(NaCl構造:Tc=19K):盛んに研究(磁性体ハンドブックp557)
  • 1980 年代:希薄磁性半導体(DMS)
    - Cd1-xMnxTe を中心とするII-VI 系DMSが脚光
  • 1990 年代
    - III-V 系 DMSが脚光:Tc がホール濃度に依存
    - Ga1-xMnxAs においてTc=110K(=-163℃)
  • 2000年
    - Cd1-xMnxGeP2 においてTc=316K(=+43℃)

  • III-V系のDMSとどこが違うの?

  • GaAsでは2価のMnが 3価のGaを置換 - 電荷補償が必要、 - Ga のイオン半径0.62 Å< Mn のイオン半径0.91 Å →熱平衡では固溶限あり, 解決のため低温MBE 成長
  • CdGeP2 では2価のMn が2価のCd を置換 - 電荷補償が不要 - Cd のイオン半径1.03 Å>Mn のイオン半径0.91 Å - 高濃度のMn ドーピングが可能

  • II-VI系のDMSとどう違うの?

  • CdTeにMnは入りやすい(熱平衡で77%固溶)
  • Cd1-xMnxTeは常磁性(低温ではスピングラス) (常磁性:磁気モーメントがバラバラな向きに配向、磁界で平行になろうとする)Mn-Teの電子軌道混成が大きい→超交換相互作用強く、強磁性相互作用の元となる2重交換相互作用が機能しない
  • Cd1-xMnxGeP2ではGeを置換したMnがアクセプタとしてMnのdバンドにホールを供給 → 2重交換相互作用が機能し、強磁性を発現か?

    [1]磁性:ハードディスク、ビデオテープ、MO、MD、  など磁気記録に使われる。磁石の性質は磁気ヒステリシスに特徴あり。

    [2]半導体:トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、レーザ、集積回路(IC,LSIなど)に利用される。パソコンのCPUやメモリ(DRAM)に使われる。電気の流れ易さが温度変化や不純物の添加で制御できる性質が特徴


    磁気ヒステリシス

  • 強磁性体の磁場Hと磁化Mの関係を与えるグラフで、ループを描く性質

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