物理システム工学科3年次「物性工学概論」2006.4.18配付資料

佐藤勝昭教官(副学長) 火曜1限、0031教室

E-mail: satokats@cc.tuat.ac.jpホームページhttp://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/


第1回講義の感想・質問

(1)現実の材料に興味

1.   この授業は、我々の身の回りで使われている便利な道具(パソコンやケータイ)に使われている材料の性質を学ぶことができ興味が湧く。(A)

2.   物性とは何かを少しだけ知ることができた。現代の技術やモノのサイズなどいろいろなことに触れて面白かった。(O)

3.   物理を現実世界で利用するには様々な物質の特徴を知らないといけないと思った。(K)

4.   身近な話題がテーマだったのでイメージしやすく、物理・化学の知識が日常生活に役立っていることを実感した。(A)

5.   様々な便利なものにはモノの性質を上手に使っていることがわかった。Ipod ipod nano に物理がふんだんに使われている。実際に物理がどう役立っているかを学べそうで楽しみだ。(H)

6.   身近にあるモノについてよく考えてみるととても興味深いものが多いと感じた。(K)

7.   今生活で使われている機器の原理を学び、日頃何気なく使っていたものがどのように構成され、どう動くか学べて新しい発見と興味が湧いた。(N)

8.   身近にある携帯やゲーム機、PC 等に使われている普段は考えもしない技術を知れてためになった。携帯をいくつか持っていくと電子レンジになるか?(S) 電子レンジのマイクロ波パワーは数百ワット、携帯の電波は数十ミリワットですから電子レンジにはなりません。

9.   日常生活に身近なモノの例を話してもらうと、わかりやすいし、トリビアにもなりウンチクを知ることができてとてもよい。(M)

10.身の回りのほとんどの機械、そして、今の情報化社会が、物性の発展なしにはあり得ないことがよくわかった。物性をよく知り世の中でどのように役立っているかを学びたい。(T)

 

 (2)もっと知りたいと思ったこと

1.   全部面白そうだが、身近になってきた液晶や光が気になる。(Y)

2.   様々な金属の今まで知らなかった特性を知って、まだまだある沢山の物性を知り理解したい。(E)

3.   名前だけ聞いたことのある材料でも、何も性質を知らないものが多いのでよく勉強したい。(T)

4.   物理が医療面でどのように活躍しているか知りたい。(A)X線、MRIPET、胃カメラ、レーザ・・・レーザのところではすこし触れます。

5.   発振器用水晶のおかげで携帯電話が混線しないことなど具体的な話はもっと知りたい。

6.   東芝が出しているHD 内蔵の携帯電話に興味を持っている。データがHD に記録されていく仕組みを知りたい。→昨年7/12の資料参照http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/B050712OHP. html

7.   量子コンピュータ、エネルギー問題(太陽電池、原子力)(M)この授業では材料物性に限定します

8.   今実現されている技術などに関して、物足りなく感じたので、2回目以降が楽しみ。(U)

9.   液晶テレビ、および、液晶そのものについて詳しく知りたい。(K)

10.学生実験でトランジスタを使っており、その仕組みはある程度理解したが、もっと内部の構造や、応用のされ方を知りたい。(I)

11.身近にある材料の性質について詳しく知りたい。(S)

 

 (3)授業への注文・提案など

1.   知らない言葉(特にカタカナ)とか、知っていても忘れている言葉が所々あってむずかしく感じた。(O)ごめんなさい。なるべく説明するよう心がけます。どんどん聞いてください。

2.   カタカナやアルファベットが多くてメモしきれなかった。(A)重要な用語は、プリントにあります。それ以外のは、聞き流してください。

3.   大学3年生が読んでも入りやすい物性のお薦め本・参考書あれば教えてください。(T)ちょっと古いけれど、私とE科の越田先生で書いた「応用電子物性工学」(コロナ社)はいかが。本を貸しますよ。

4.   1限、パワポ・・眠気が・・。ともかく手を動かしたい。(M)パワポだけでなく、できるだけ黒板も使います。

5.   スライドでもよいので実際のモノを沢山みたい。(S)

6.   今回の内容からは試験の内容などには見当もつかない。(U,M) 昨年テストは講義のWebで見られます。

7.   話が大まかなので何をしていくかつかめない感があった。もっと詳しくなると楽しそうだ。(W)

8.   授業の最初に大まかな流れを説明してから入っていった方がよいと思う。(T)

 

(4)これまで学んだ授業との関係

1.   2年次の物質科学入門、現代化学で出てきた言葉も多く出て、やっと3年になって実際にある技術に近づいたようで楽しみだ。(Y)

2.   材料の原理とかが物理で説明できるのが興味深かった。(O)

3.   今まで量子力学や現代化学を学んで来たことが、この講義で実用編として学べそうでとても期待出来そう。(T)

4.   化学の知識がかなり重要になってくると感じた(T)

5.   これまでに学んできた物理・化学を実際のモノに応用していく授業なので面白そうに感じた。卒研やその先で学ぶことのきっかけになる授業だと思う。(A)

6.   今までの授業では材料や物質を扱っているのが少なかったので、この講義は具体的だと思った。(S)

7.   2年の時の物質科学に似ているように思ったが、シラバスを見て、より工学的であると思った。(S)

8.   現代化学をもっと物理寄りにした感じ。(I)

9.   化学を知って物理に用いる学問だと思った。(Y)

10.化学と電磁気については、去年までに学んでいるので復習したい。物理だけではダメで化学もできなくてはと思うと気が重くなる。(S)暗記としての化学でなく、物理に基づいた化学なら入りやすいよ。

11.今までただ基礎をやってきたが、いよいよ実践的、応用力を勉強出来ると思った。少し避けてきた化学にも興味を持たなければならないと思った。今の知識がどう企業で使えるのか気になる。(M)

12.最先端の技術にもレンズの原理など基礎的な原理が使われているそうなので、忘れているところを復習したい。(Y)

13.結晶についてとGaAs については、物質科学入門で出てきた。ペンローズパターンは技術者倫理で触れていた。ポーリングさんの量子化学は現代化学のレポートのとき参考にした。(A)

14.化学をはじめあらゆる知識が必要と感じた。(K)

15.物理が実際にどのように使われているかを紹介されたが、興味深かった。(S)

 

 (5)この科目について

1.   今までの授業では、どちらかといえば理論的なことを学んできたが、この授業では「工学」的なことを学べるように思った。(N)

2.   物理システム工学科的な科目だと感じた。光学的な話は面白い。やっと、基礎基本から抜け出した感がある。(I)

3.   就職ガイダンスのような印象もあった。まさに概論、どんな選択肢があるのか教えられているよう。(M)

4.   今まで学習したことをもとに実質的なこと、研究につながることを学ぶ授業だと思った。(M)

5.   物性工学は今までと違って、式や計算ではない分野だと感じた。物質科学と似ているかなと思う。そういう意味でテストが不安。(M)金属の反射のところでは、自由電子の運動方程式など式も使います。テストは、昨年の講義のWebにありますよ。

6.   はじめ「物性」という意味がわからなかったが、材料の機能であると知り納得した。(O)

7.   これまで受けた授業とは別のジャンルのものだと感じた。実用的知識が得られそうで楽しみだ。(M)

8.   電気器具で使われている材料や仕組みを学ぶ授業だと思った。(I)

9.   おぼろげながら外で行われている研究と、今学んでいる勉強とのつながりが見えてくる内容だった。研究に進むときの指針になると思う。(K)

10.物性とは材料の成り立ちについて学ぶ授業であるとわかった。(I)

11.単に数式だけの講義より取り組みやすい。(K)

12.1 限はつらいが、勉強するとためになるのでがんばれると思う。(A)

13.いままでやってきた基礎学問から、より応用的なテーマ・技術について扱うのが物性かなと思えた。原子単位からだんだんヒト、社会に近づいた感あり。(A)


(6)講義のやり方について

1.   前(1年次電磁気)のように新設・丁寧な授業になりそうで少し安心した。(O)

2.   相変わらずときめく授業でした。(Y)

3.   1年の時に電磁気を教わったが、わかりやすく、授業の雰囲気も柔らかかった。今回もそれらが継続されていて有意義だった。(S)

4.   ネットに教材が載っているのは助かる。(S)

 

 

 


金属とはなにか:
金属光沢を持ち、電気と熱をよく導き、固体状態では展性・延性に富む物質 (岩波・理化学辞典)

 

元素周期表(http://www.hk.airnet.ne.jp/shung/periodic_table_s.htm)


周期表と電子配置

H               1s1

He 1s2 閉殻 [He]と記述

Li                [He] 2s1

Be              [He] 2s2

B                [He]2s22p1

C                [He]2s22p2

N                [He]2s22p3

・・・

Ne              [He]2s22p6  à [Ne]

 

Na              [Ne]3s1

Mg              [Ne]3s13s2

・・・

Ar               [Ne]3s23s6 à[Ar]

K                [Ar]4s1

Ca              [Ar]4s2

Sc              [Ar]4s23d1

Ti                [Ar]4s23d2

・・・

Cu [Ar] 4s23d1

 

 

原子における電子配置

                  原子内の電子:中心力の場で原子核と結びつけられているà 球面調和関数で記述される

                  軌道の広がりの大きさを決めるのが主量子数n

                  軌道の空間的な形状を決めるのが方位量子数(軌道角運動量指数)l と磁気量子数m

                  n1,2,3,4,5・・、
l0, 1, ・・・, n-1
m-l,-l+1,・・・,l という値をとる

                  主量子数と軌道角運動量量子数

                  主量子数 n

                  軌道角運動量量子数 l=n-1, .... ,0

電子のエネルギー準位1s2など

1s2というのは1s軌道に2個の電子が存在することを表す。s, p, d, f は軌道の型を表し、それぞれが方位量子数l=0, 1, 2, 3に対応する。

さまざまな金属を図で説明

 [WebElementsTM Periodic table

 http://www.webelements.com/)より]


Ia属(アルカリ金属): Li, Na, K, Rb
IIa
(アルカリ土類): Be, Mg, Ca, Sr, Ba
3d
遷移金属: Sc, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu
貴金属: Cu, Ag, Au
IIb
(亜鉛属): Zn, Cd, Hg
IIIB
(アルミニウム属): Al, Ga, In, Tl
半金属: Sn, Sb, Bi

 

金属の機械的性質

金属は、弾性限界を超えた応力に対し永久歪みをともなって変形する。このような変形を塑性(plasticity)という。

    弾性変形と塑性変形の境界点を降伏点という。

    塑性には展性 (malleability) 延性(ductility)がある。

    展性:弾性限界を超えた応力によって物体が破壊されず箔に広げられる性質。

    延性:弾性限界を超えた応力によって物体が破壊されず引き延ばされる性質。硬度の高いものほど延性が小さい。

    脆性破壊(brittle fracture):塑性変形を伴わず、割れの急速な進展によって破壊することである。劈開など。

    疲労破壊(fatigue):繰り返し応力が加わって破壊がおきる現象。軟らかい(硬度の低い)金属は疲労破壊を生じない。 

 

展性(malleability)

    金属塑性の1つ

    弾性限界を超えた応力によって物体が破壊されず箔に広げられる性質。

    金、アルミニウム、銅等は、この性質が大きい金属材料である。

    たとえば、1オンス(23.3 g)の金は、箔打ちによって、100平方フート(9 m2)の箔に広げることができると、記述されています。(http://www.goldinstitute.org/facts/)

延性(ductility)

                  金属塑性の1

                  弾性限界を超えた応力によって物体が破壊されず引き延ばされる性質。金属の延性とは、金属材料を線や棒の様に細く、長く引き延ばす事の出来る性質を表す。

                  金、銀、白金、銅等は、金属材料中、最も延性に富む材料である。一般に、合金になると延性は減少する。また、硬度の高いものほど延性が小さい。

                  1オンス(28.3g)の金は、5マイル(8 km)の長さにまで引き延ばすことができると記述されている。

 



応力-歪み曲線

(http://www.nsbri.org/HumanPhysSpace/focus6/student2.html)



金属結合

(http://www.chemguide.co.uk/atoms/bonding/metallic.html)
金属においては、原子同士が接近していて、外殻のs電子は互いに重なり合い、各軌道は2個の電子しか収容できないので膨大な数の分子軌道を形成する。
電子は、それらの分子軌道を自由に行き来し、もとの電子軌道から離れて結晶全体に広がる。これを非局在化するという。
正の原子核と負の非局在電子の間には強い引力が働き、金属の凝集が起きる。
この状態を指して、電子の海に正の原子核が浮かんでいると表現される。

 

遷移金属はなぜ硬い
金属結合は、原子の外殻電子のうちs,p電子が結晶全体に広がることによって全エネルギーが低下することが原因ですが、このことが通常金属(Na, Mg, Alなど)や貴金属(Cu, Ag, Au)の柔らかさをもたらします。一方、 Fe, Tiなど遷移金属の結合にはd電子が寄与しています。遷移金属では、原子あたりの電子数が多く、電子の海に供給する電子数が多いことが結合の強さをもたらし、高い融点と硬さをもたらしています。


金属の高い電気伝導率
電気伝導率(導電率) の式s=nem を導こう

電流密度J= 単位時間に単位面積を流れる電荷の総量=nev

速度v = 移動度m × 電界E 

従って J=nem Eº s Eこれより s=nem

金属の導電率の高さ→キャリア数nによる

 

高い熱伝導率
熱伝導=格子熱伝導+電子熱伝導
電子数が多い→電子熱伝導が大きい:Wiedeman-Franzの法則k/s=LT k=熱伝導率、 s=電気伝導率、L=ローレンツ数、T=絶対温度)

      [] 逆は真ならず。熱伝導がよいからといって電気伝導率が高いとは限らない。例)ダイヤモンド

 


 

2 回問題

元素の周期表において

上から下に行くに従って変わるのはどの量子数か

1つの行で左から右に行くに従って変わるのはどの量子数か

遷移金属における電子配置の特徴は何か。

 

次週の予告

                  金属の電気伝導・熱伝導

                  金属の色:金はなぜ金ぴかか

予習のポイント

                  様々な光の色を3原色(赤、緑、青)で表すことができるのはなぜか。

                  金属に外部から高周波電界の加わったとき、自由電子の運動方程式を立てよ。

                  誘電率の実数部が負の値をとると、高い反射率となることを確かめよう。

参考書:機能材料のための量子工学第4章