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東京農工大学 工学府 機械システム工学専攻


Japanese/English

研究テーマRESEARCH PROJECTS

火山爆発のダイナミクス

桜島噴火 2013年7月22日

「火山噴火〜高速流体力学・気泡力学との接点」

東京大学地震研究所・市原美恵准教授のグループらと共同で火山爆発のダイナミクスに関する研究を進めています.
左の写真は2013年7月22日に国際火山学会のツアーでたまたま出会って撮影した桜島の噴火の様子です。 日本には,桜島をはじめ活火山と呼ばれる過去1万年以内に噴火したことのある山が100以上あり、 これは世界全体の10%に相当します.日本の国土は、世界の陸地の0.25%を占めるに過ぎないので、相当な集中率です。
物理的な視点でみると、火山噴火は発泡したマグマが噴出する過程と捉えられます。この過程は、本研究室の専門分野である、混相流、高速流が密接にかかわる現象です。


発泡マグマ模擬材料の破砕イメージ

「急減圧にともなう発泡マグマの破砕〜室内実験」

噴火のきっかけである発泡は、マグマの圧力低下,あるいは温度低下にともなって生じます。 私たちの興味は,発泡したマグマがどのような条件で爆発(破砕) するのか、ということを明らかにすることです。
マグマは水に比べてはるかに高い粘度を持つ流体ですが,変形に要する時間によっては固体として振る舞う「粘弾性」という性質を持っています.マグマが固体的に振る舞うと、マグマ内に閉じ込められていたガスが急激に放出されるため、大規模な爆発につながると考えられています.
そこで私たちは,火山噴火時にマグマが受ける減圧過程を模擬できるよう,100気圧まで加圧でき,100分の1秒以下で大気圧まで一気に減圧できる装置を製作しました.その装置を用いて,酸素気泡入り水あめを発泡マグマ模擬材料として用いたユニークな室内実験を行っています.
これまでに行ってきた室内実験や解析を通じて分かってきたことは、激しい爆発のきっかけとなるようなマグマの固体的な破砕には、破壊に必要な力が加わっていることに加えて、マグマ自体に働く力の変化が固体的な性質を示す時間内に生じることが必要だ、ということです (Kameda et al. 2013)。
さらに、我々の実験からは、 破壊に必要な力が加わっている際のマグマの挙動はmetastableで、爆発的な噴火になるか否かは、発泡マグマの不均質性に強く依存しているようだ、ということが分かりつつあります(Kameda et al. 2017)。


本研究に関する最近(2013-)の主な論文・解説,研究助成

  1. Takeda, S., Ohashi, M., Kuwano, O., Kameda, M. and Ichihara, M. (2020), “Rheological tests of polyurethane foam undergoing vesiculation-deformation-solidification as a magma analogue,” Journal of Volcanology and Geothermal Research, Vol. 393, 106771.
  2. Ohashi, M., Ichihara, M., Takeda, T., Hirota, K., Sato, S., Kuwano, O., and Kameda, M. (2020), “Formation of tube-pumice structure under pure shear: insights from extension tests of solidifying foam,” Journal of Volcanology and Geothermal Research, Vol. 392, 106772.
  3. 市原 美恵, 亀田 正治 (2018) "アナログ実験による爆発的噴火中の火道内現象の可視化," 可視化情報, Vol. 38, No. 149, pp. 1-5.
  4. Kameda, M., Ichihara, M., Maruyama, S., Kurokawa, N., Aoki, Y., Okumura, S. and Uesugi, K. (2017), "Advancement of magma fragmentation by inhomogeneous bubble distribution," Scientific Reports, Vol. 7, 16755.
  5. Kameda, M., Ichihara, M., Shimanuki, S., Okabe, W., and Shida, T. (2013), "Delayed brittle-like fragmentation of vesicular magma analogue by decompression," Journal of Volcanology and Geothermal Research, Vol. 258, pp. 113-125.
  6. 科研費・基盤研究(A)(2019-2022)「流体の破壊力学―破壊の時間発展モデル構築と流動履歴依存性の検討」研究課題番号:19H00713
  7. 科研費・基盤研究(B)(2016-2018)「加速するマグマは硬くなるか軟らかくなるか―流体の脆性破壊過程の解明と火山への応用」研究課題番号:16H04039
  8. 科研費・挑戦的萌芽研究(2014-2015)「不均一に気泡が分布する粘弾性体の流体/固体遷移領域における破砕メカニズムの解明」研究課題番号:26630047
  9. 科研費・挑戦的萌芽研究(2012-2013)「流体/固体遷移領域における発泡体破砕メカニズムの解明」研究課題番号:24656119

風洞計測技術

感圧塗料を塗布したデルタ翼模型

「感圧塗料 (Pressure-sensitive paint)」

感圧塗料(PSP)は風洞模型に塗り、表面の圧力分布を光学的に計測するものです. 例えば、翼全面に圧力センサーを付けて、そこに加わる圧力を測ることはできませんが、感圧塗料を使えば、全表面圧力を計測することができます。 現在は,主に航空機の風洞実験に用いられていますが,自動車模型や回転翼(ファン)などへの適用も検討されています。
私たちは,JAXA風洞技術開発センター大阪市立大学複合先端研究機構の研究者と共同で, 感圧塗料自体の開発から風洞実験への応用まで幅広い研究を進めています。


デルタ翼非定常圧力

「高速応答型感圧塗料による非定常空力現象計測」

本研究グループは,特に,時間的に圧力が変動する現象を対象とした高速応答型PSPの開発と応用に重点を置いて研究を進めています。
右図は高速応答PSPの一つである陽極酸化アルミPSPを用いた計測例です. 高速応答PSPを使えば1000分の1秒で変化する三角翼表面の圧力をとらえることが可能です。
最近は,計測精度向上に必要な温度・湿度感度の高精度評価 (Kameda et al. 2015), より振幅が小さい低速流中に置かれた物体周りの圧力変動 (Noda et al. 2018) や回転翼(コンプレッサ,ファン)表面の圧力分布計測 (Kitamura et al. 2018) にも挑戦しています.

本研究に関する最近(2013-)の主な論文,発表,研究助成

  1. Noda, T., Nakakita, K., Wakahara, M., and Kameda, M. (2018), "Detection of small-amplitude periodic surface pressure fluctuation by pressure-sensitive paint measurements using frequency-domain methods," Experiments in Fluids,Vol. 59, No. 94.
  2. Kitamura, T., Kameda M., Watanabe, W., Horimoto, K., Akimoto, K. and Akahori, A. (2018) "Mesurement of unsteady pressure field in a turbocharger compressor using pressure-sensitive paint," ASME Turbo Expo 2018: Turbomachinery Technical Conference & Exposition (June 11-15, 2018, Oslo, Norway).
  3. 野邑 佑二,亀田 正治,中北 和之,加藤 裕之,小池 俊輔 (2015), "円柱周り流れの非定常圧力,渦度場に対する PSP/PIV複合計測," 可視化情報学会論文集, Vol. 35, pp. 1-6.
  4. Kameda, M., Yoshida, M., Sekiya, T. and Nakakita, K. (2015), "Humidity effects in the response of a porous pressure-sensitive paint," Sensors and Actuators B: Chemical Vol. 208, pp. 399-405.
  5. 科研費・基盤研究(B)(2019-2021)「圧力・温度場非侵襲イメージング法の深化と移動変形物体,高温高圧場計測への展開」研究課題番号:19H02063
  6. 科研費・基盤研究(B)(2016-2018)「光学的圧力センシング法の微圧,移動体,液体流れ計測への展開」研究課題番号:16H04265
  7. 科研費・基盤研究(B)(2013-2015)「塗装型高速応答感圧塗料による移動物体周り非定常圧力場計測法の確立」研究課題番号:25289029

航空機要素技術

コンコルド

「次世代超音速機」

JAXA次世代航空イノベーションハブ数値解析ユニットの研究者と共同で次世代航空機に関するさまざまな要素研究を進めています.
コンコルドに替わる次世代SSTの実現には,コンコルドに比べて圧倒的に環境負荷,燃費を低減する必要があります。 日本ではJAXAが継続して次世代SSTのプロジェクトを進めており,現在は,「静粛超音速機」実現に向けた「ソニックブームを低減手法」実証試験(D-SEND)が行われています。


インテークバズCFD/風洞実験比較

「超音速機エンジンインテーク」

超音速機エンジンインテークは,超音速である主流をエンジンに適合するよう減速・圧縮するための装置です。 インテークは,超音速から亜音速までの流速域を含み内部流れ,外部流れが混在する,流体力学研究者にとっては複雑で手ごわい研究対象であり,コンコルドの開発時には,風洞実験の半分以上がインテーク部分の試験に費やされたとされています.
本研究グループでは,特に,インテーク前方に存在する衝撃波システムの振動現象(buzz)に着目し,最近,その発生メカニズムの数理モデル構築に成功し,風洞実験およびCFDによる再現可能性を実証しました(Yamamoto et al. 2020).
また,翼周りに生じる衝撃波の振動 (buffet) や騒音(TEノイズ)を対象に最新のモード解析手法によるメカニズムの解明(Kojima et al. 2020)や制御法の検討を進めています。


本研究に関する最近(2013-)の主な論文,研究助成

  1. Kojima, Y., Yeh, C.-A., Taira, K. and Kameda, M. (2020), “Resolvent analysis on the origin of two-dimensional transonic buffet,” Journal of Fluid Mechanics, Vol. 885, R1.
  2. Yamamoto, J., Kojima, Y., Kameda, M., Watanabe, Y., Hashimoto, A. and Aoyama, T. (2020), “Prediction of the onset of supersonic inlet buzz,” Aerospace Science and Technology, Vol. 96, 105523.
  3. 小島 良実,橋本 敦, 青山 剛史, 亀田 正治 (2018), "三次元翼における遷音速バフェット特性のスパン方向変化," 日本航空宇宙学会論文集, Vol. 66, No. 1, pp. 39-45.
  4. 科研費・挑戦的研究(萌芽)(2020-2021)「流れ情報の高効率縮約技術に基づく翼騒音アクティブ制御法の開発」研究課題番号:20K21043

気液二相流の基礎と応用

オリフィスから発生する気泡の離脱促進

「気泡力学・熱物質輸送」

気泡の運動を調べる学問を「気泡力学」と呼びます.本研究グループでは,概要で示した圧力変動にともなう気泡運動,熱物質輸送の研究に加えて, 右図のような小孔からの気泡発生,気泡噴流中の気泡の溶解過程,高粘度液体中の気泡変形などのメカニズムを明らかにする基礎研究を進めてきました。
最近は,気液二相流全般に対象を広げ,下記に記す生物センシングへの応用や,田川義之研究室との協働による水中衝撃波に対する新しい可視化計測法の適用,液膜破断プロセスの解明を進めています.


インピンジャ

「鼻孔を模擬したVOC捕集・検出技術」

テロ対策や呼気による病気診断などの分野で、微量揮発性有機化合物(VOC)を対象としたリアルタイムモニタリングが注目されています。 特に,生物関連物質を利用した高感度バイオセンサの実用化が期待されています。
センサの開発と同様に重要なのがサンプリング技術の開発です。バイオセンサを用いるためには,水難溶性物質であるVOCを水に高効率で捕集する方法を確立しなければなりません。
本研究グループでは,鼻孔のような円筒内の液膜の中に「匂い結合タンパク質(OBP)」を添加することで捕集率を圧倒的に向上させる方法の開発(Kida et al. 2015)や,米国Duke大学の研究グループと共同で,人工細胞センサパネルによる気相中の匂い物質の同定 (Kida et al. 2018)に成功しています。

本研究に関する最近(2013-)の主な論文,研究助成

  1. Kida, H., Fukutani, Y., Mainland, J., de March, C., Vihani, A., Li, Y. R., Chi, Q., Liu, L., Kameda, M., Yohda, M. and Matsunami, H. (2018), "Vapor detection and discrimination with a panel of odorant receptors," Nature Communications, Vol. 9, 4556.
  2. Ishihara, S., Tagawa, Y. and Kameda, M. (2018), "Rupture of an air bubble on the solid surfaces," Journal of Fluid Science and Technology, Vol. 13, Issue 3, JFST0015.
  3. Kida, H., Tsukada, S., Tagawa, Y., Sato, R. and Kameda, M. (2015), "Effective collection of volatile organic compounds by use of rimming flow with odorant binding proteins in water," Mechanical Engineering Journal Vol. 2, No. 4, p. 15-00244.
  4. 大学院リーディングプログラム「グリーンクリーン食料生産を支える実践科学リーディング大学院」研究助成(2014-2016)
  5. 学長裁量経費『博士課程(後期)学生を対象とした海外派遣』助成(2016)

バナースペース

亀田研究室

〒184-8588
東京都小金井市中町2-24-16

東京農工大学小金井キャンパス

教員室 6号館504
研究室 6号館503, 505
実験室 2号館112