カイコの単為発生

自然単為発生:卵巣卵や産下未受精卵を室温で保護すると単為発生する卵がある。孵化率は極めて低く、孵化蚕には雄の割合が多いと言われています。 

人為的単為発生:卵巣卵や産下未受精卵に高温処理、低温処理、塩酸に浸漬処理、温湯処理などの処理によって人為的に発生させる事ができます。特に温湯処理では高い単為発生率が得られます。。


○温湯処理による単為発生


赤卵ヘテロ(+/re)
黄血へテロ(Y/+)
メス(ZW)
この様な幼虫を飼育し、

 ↓
  
産下不受精卵や卵巣卵(減数分裂の第一分裂中期で停止状態)に
46℃,18分温湯処理すると、停止していた減数分裂が再開します。
還元分裂が省略されて発生する為に2nの卵核が形成されます。 
下右図は前還元で示してあり、下左図は後還元で示してあります。


        ↓
            
             
赤卵ヘテロ(+/re)
                   黄血へテロ(Y/+)
                   メス(ZW)
                   雌親とまったく同じ遺伝形質を示します。
                  赤卵、白血、雄などの個体は出現しません。


材料と方法
材料蚕は、交雑種なら60〜90%の単為発生率を得ることができますが、原種や交雑していない系統のカイコを用いるとほとんど単為発生しません。

用意するもの:解剖鋏、ビーカー、漏斗、ガーゼ、エナメル線、シャーレ、
46℃のお湯、15〜17℃の水
25℃の恒温器、15〜17℃の恒温器

方法
1)蛾から卵巣を摘出する

蛾の尾部を鋏で切る。


黄色く見えるのが卵巣


腹部を押すと殆どの卵巣が出てくる。

2)卵巣卵から卵管を外す。
 
水を張ったビーカに押し出した卵巣を入れると卵管がほどけて水の中に落ちる。

 
漏斗の上にガーゼをひき、その上に摘出した卵巣を乗せる


指でこすって卵管を外す


水で洗いながら再びビーカーに移す

 
卵管が取れた卵巣卵は底に沈みます。取れた卵管(半透明状のもの)は浮いてきます。
卵管を捨て、ガーゼで擦り、卵管を取り外す操作を2、3度繰り返します。


卵巣卵だけがビーカーの底に溜まります。
卵管が残っていても単為発生には影響しませんが、
卵管が大量に残っていると卵巣卵同士がくっ付いて調査しにくくなります。


そして、ガーゼに卵巣卵を移し、25℃で一日保護します。
すぐに温湯処理しても単為発生しますが、発生率が若干低下します。
安定して高い単為発生率を得るには25℃で一日保護してください。


卵巣卵をガーゼで包み、エナメル線でくくる。テルテル坊主状のものを作る。


46℃の温湯に18分浸漬処理する。
温度は±1℃位、時間は±5分位はそれほど影響しませんが、
一番良い条件は46℃で18分です。


温湯した後、20℃以下の水で10〜20分水冷。


水冷後、水浸しの状態で保護すると発生が阻害されるので、
ガーゼを開く。または、水をよく切る。
15〜17℃(必ず、20℃以下)で保護する。
15℃では4日、17℃では3日程で着色は始まる(浸酸する時は、この時にする)。
着色が始まったら25℃に移し、普通の卵と同様に保護する。


黒く着色しているのが単為発生した卵
黄白のままの卵は発生しなかったもの
上手に処理すると このように90%以上の単為発生率を得るとこができます。


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