カ イ コ の 胚 発 生



カイコ休眠卵の発生段階表
T.前休眠期
Stage1.受精期 産下後,雌雄両前核合体まで
    2.分割期 受精から分裂核の卵表到達まで
    3.胚分化期 胚盤葉形成から胚帯形成初期
    4.卵黄分割期(ふたば期)  卵黄分割初期
    5.だるま形期  頭葉が識別される
    6.こけし(さじ)形期   胚に首状の括れ
    7.へら形期 頭葉以外の部分が同幅に収縮
U.休眠期
   8.休眠T期 胚が厚い卵黄層に埋もれる
   9.休眠U期 液腔が発達
V.越冬期
  10.前甲期
  11.甲 期
  12.乙A期
  13.乙B期
W.臨界期
  14.丙A期
  15.丙B期
  16.丁A期         神経溝出現
  17.丁B期        胸肢突起発生
  18.上唇突起発現期
  19.短縮期
  20.頭胸分節期
  21.反転期
  22.反転完了期
X.器官形成期
  23.毛瘤発生期
  24.剛毛発生期
  25.気管螺旋糸発生期
  26.点青T期          頭部着色
  27.点青U期      漿液膜を飲み込む
  28.催青T期 全体が青み、頭部は濃く識別可
  29.催青U期       卵全体が青む
  30.孵化期


 カイコの卵は不透明であり,そのままでは胚子の発育状態を観察することはできない。観察のためには,パラフィン標本の作製や酸で卵殻を溶かし胚子を摘出し,標本を作製するなどの方法がある

●温湯固定による胚子の標本作成;温湯処理より胚子のみ固定し,卵黄は固定されない状態にして,卵内より胚子のみ取り出す。慣れれば短時間で簡単に胚子の外部形態を観察することができ,発育段階を調査することができる。
(1). 73〜75℃の温湯に3〜5 分間(胚が若い場合や卵殻が弱い場合には温度を低めに,時間を短くする),卵を浸浸固定する(固定が不良の場合,胚子は軟らかく損傷しやすく,固定が過度になると胚子は脆くなり,いずれの場合も卵黄が除去し難くなる)。

(2).台紙に産ませた卵は,台紙についたまま固定し,台紙を乾かす。
 卵が台紙から剥がれそうな場合,瞬間接着剤などで台紙と卵を接着する。

(3).30%アルコ−ルまたは生理食塩水(素早くできるなら水でも良い)中で卵殻にカミソリ刃などで切れ目(反転前の卵では背側,反転後の卵では腹側)け,スポイトで吸引を繰り返すと胚子が出る。または実体顕微鏡下で卵殻,漿液膜をピンセット等で除去し,胚子を取り出す。卵殻に切れ目をつける際,あまり卵内部まで刃を入れると胚子が傷付く(切れ目のつけ方 は各人のやりやすいように)。卵殻は非常に堅いためカミソリの刃は10個ほど切ると切れなくなる。切れない刃で作業すると卵を潰しやすいので,切れなくなったらすぐ新しい刃と交換する。

(4).胚子に付着した卵黄は針先,ピンセット,筆先等で取り除く(実体顕微鏡下で操作すると操作しやすい)。

(5). 0.05%メチレンブリュ−(水又は生理食塩水,30%アルコ−ルに溶解),メチオニン(30%アルコ−ルに溶解),デラフィ−ルド・ヘマトキシン等で染色する。30%アルコ−ル中に染色液を数滴滴下し,胚子の染色状態を観 察しながら,適度に染色された時に胚子をスライドガラスの上に乗せる。過剰に染色した場合,観察しにくいので 30%アルコ−ル中に胚子を入れ脱色する。

(6). 顕微鏡観察を行う。 染色した胚子を保存したい場合,ホ−ルスライドグラスに胚子を入れ,グリセリン等で封入する(数日保存できる)。

参考書:蚕種総論.全国蚕種協会刊
参考論文:高見丈夫・北沢敏男 家蚕の胚発生段階表T. 蚕糸試験場彙報.75.1-31(1960)


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