平成18年度
4581 病原微生物学授業情報

Modified: Jan 25, 2007

質問に対する回答など


10月 3日クラス

質問と回答

病気の名前を板書して欲しい
すみません。今回のクラスはイントロだったため、詳細は省きました。各論において、病原や病害を詳しくご紹介します。

植物の遺伝的な原因による障害は病気ではないのか?
農業用植物の場合、通常、育種の課程で遺伝的に良好な性質の系統を品種として扱いますし、品種内では殆ど個体差は無い状態になっています。従って、集団として遺伝的な障害がでることは殆ど想定されません。ただし、交配のミスなどで遺伝的に異なる個体の種子が混入したりする場合がありますが、かなり特殊なケースです。また、集団内に、突然変異などによって起こる遺伝的な障害を持つ個体が少数出現することがありますが、それは異常個体として排除されます。あくまで、本講義での「病気」は微生物によって起こされる障害とご理解下さい。

目で見えないような障害を持つ植物が健全であるかどうかはどう判断するのか?
目で見える障害を「病徴」と呼びます。基本的に病徴を出さずに、良好に生育、期待通りの収穫が得られる場合は健全であると判断される場合が殆どです。ただし、目で見えない状態で病原に感染している場合、殆ど病徴なしに病気に罹っている場合もありますので、見逃されるケースも多いと思われます。このような感染、あるいは発病が問題となるのは、可食部に感染していてヒトなどに悪影響を与える毒素を出す場合、種子や栄養繁殖体(種イモ、球根など)に感染していて次世代に病気を伝搬してしまう場合、栄養繁殖体(接ぎ木の穂木)に感染していて接ぎ木先の植物体に病気を広めてしまう場合などが想定されます。そのため、免疫学的な方法や遺伝子的な解析で、種子、苗などの病原による感染の検診を行う場合があります。

ウイルスは生物ではないのに病原として扱うのか?
微生物の定義自体があやふやなのですが、小さな生物として理解するのが一般的です。従って、菌類、細菌類などとともに、線虫類や原生動物類も過去には、微生物としてとらえられ、病原として扱われてきました。ウイルスも汁液伝搬性であること、目で見えないことから以前は小さな微生物ではないかと考えられていたこと、ウイルスが非生物であることがわかった後でもあえて病原と別の定義をする意味がないことから、現在でも病原として取り扱われています。ウイロイドも同様です。ウイルスや、最近ではタンパク質もヒトの病原として扱われているのも同様の理由です。

アイルランドのジャガイモ飢饉(1845-6)の時のアイルランドの人口はどれくらいか?
当時の人口は800万人位とされています。このうち、100万人余りが餓死、150万人が移民したと言われています。

T系統のトウモロコシとは何か?
トウモロコシは基本的に他殖(他家受粉)のものが多く、良好な特性を固定して保ち、利用することが困難でした。そこで、自殖性のトウモロコシを用い、しかもハイブリッドによる良好な品種を作ることが試みられました。その際、ハイブリッド種子をつくる上で問題となるのは、自殖をいかに防ぐかという事になります。雌として使用する親の除雄(雄花を取ること)は大変な作業である上に、除去を忘れる危険性をはらんでいました。これを解決すべく、米国で1960年代に、細胞質有性不稔系統(Texas系統:T系統)の利用が行われ、これを利用して採取したT系統のトウモロコシが急速に普及しました。この細胞質有性不稔は、ミトコンドリアDNAに乗っているT-urf13という遺伝子に関連して減数分裂の不全によって起こります。ところが、この遺伝子をもつミトコンドリアの膜のみを通過できるT-toxinという宿主特異的毒素(後日紹介します)を産生するCochliobolus heterostrophusという糸状菌に、T系統のトウモロコシは非常に弱く、1970年ごろにごま葉枯病が大発生し、T系統が品種崩壊するという事態に陥った、という経緯があります。この内容については後日改めて紹介します。

現在栽培されているアルターナリア茎枯病抵抗性のファースト系トマトは遺伝子組換えによってつくられた品種か?
現時点では、我が国では遺伝子組換えによって作られた品種は食用には栽培されていません。通常の交配によって作出された品種です。

冷蔵庫の中で野菜などが腐るのはすべて病気によるのか?
昨年の回答と同様になりますが、植物組織が生きている限り、起こった現象は植物病原による病気の腐敗症状と考えて良いと思います。ただし、あまりにも生理的に異常になった(黄色くなったキャベツなど)組織や調理済みの植物については対象外です。

カンキツ青かび病など、初め出ていなかった病気が後日出てくるのは、果実の成熟などと関連があるのか?
あります。潜在的に感染していた病原が、環境の変化(この場合果実の成熟に伴う変化)の結果、病徴を出してきます。詳しくは後日紹介する予定です。

土壌を介して伝搬する病気は発生してから伝染を阻止する方法はないのか?
土壌中に生息する病原菌は土壌中で菌糸などを伸ばして、土壌水の移動とともに流れて(泳いで)、土壌粒子が風で飛んで、あるいは、根がふれ合うことによって、広がって行くと考えられています。従って、発生してから当代の他個体への伝染を防ぐのは困難な場合が多いので、実際には事前に土壌消毒などの対策をとります。


10月10日クラス

質問と回答

コッホの4原則は時に3原則に略されるとのことであるが、3原則まで当てはまって4つめが当てはまらない病原はあるのか?
基本的に、そのようなことが無いので、4つめを省略する場合があるし、それが容認される、とご理解下さい。

コッホの原則で接種に使用する植物が健全であることはどのようにして確認するのか?
実際に接種試験に使用する際に、その植物が健全であることを証明するのは大変困難なことです。しかし、接種の結果顕れるはずの病徴(=もとの病気の植物が示していた原病徴)が出ていない植物を使用する(これを一般に健全な植物と考える)こと、さらに、すべての植物に接種せずに対照(無処理)の植物を同時に用意し、接種した植物では原病徴が再現され、対照植物では病徴がでなければ、病原であることを示すのに差し支えはありません。

生きた植物に感染している菌の単離はどのようにして行うのか?
病気に罹っているあたりの植物組織片を寒天培地上に置くこと、あるいは植物組織を磨砕して寒天培地上に撒くことによって、分離します。出てきたコロニーを数度移植しながら、単一の生物から構成されると考えられる状態にします(単離)。

2つの病原が感染して初めて出てくるような病気はあるのか?
あります。糸状菌の病害が線虫が感染することでひどくなり、症状を現しやすくなることがあります。このような病気を複合病と言います。また、病原ウイルスの中には、サテライト核酸が存在して初めて病徴を表すものもあります。

「罹病」はどのように読むのか?
「りびょう」です。病気にかかる(罹る)ことを意味します。

ウイルスは生物ではないのに病原として扱うのか?
微生物の定義自体があやふやなのですが、小さな生物として理解するのが一般的です。従って、菌類、細菌類などとともに、線虫類や原生動物類も過去には、微生物としてとらえられ、病原として扱われてきました。ウイルスも汁液伝搬性であること、目で見えないことから以前は小さな微生物ではないかと考えられていたこと、ウイルスが非生物であることがわかった後でもあえて病原と別の定義をする意味がないことから、現在でも病原として取り扱われています。ウイロイドも同様です。ウイルスや、最近ではタンパク質もヒトの病原として扱われているのも同様の理由です。

ファイトプラズマについてもっと知りたい
後日、講義の中でご紹介します。12/12の予定です。

ウイロイドはどのように病気を起こすか?
後日、講義の中でご紹介します。12/19の予定です。

遺伝子に基づく系統解析を行う際、重要な意味をもつ遺伝子と発現しない領域を用いた場合で違いがでるのではないか?
その通りです。ゲノムの塩基配列に基づく系統解析を行う場合、重要な働きをする遺伝子領域で無い部分を対象にすることが一般的です。例えば、リボソームDNAの遺伝子間領域などです。これは、できるだけバイアス(生命活動などにとって重要な遺伝子の変異は選択圧になる場合がある)がかからないようにするためです。

病原の中には宿主を殺さずに半永久的に寄生し続けるものがいるか?
病気に罹った植物がすべて固体として死ぬわけではありません。罹病部の組織や細胞が殺されるとご理解下さい。絶対寄生菌の場合、栄養分を生きた植物からしかとることができませんから、宿主植物を生かさず殺さずの状態にする場合があります。green island(局部緑化)は、病原存在部の周囲の植物組織が、健常に近い緑色に保たれる現象ですが、これは、病原が栄養分を十分に得ることができるように、直近の植物組織の恒常性を維持しているため起こると考えられています。

disease triangleにおける病原ー植物相互関係は一般化できるものか?
disease triagnleが示しているのは、単なる概念で、個々の植物ー病原の相互関係はそれぞれ特徴的です。disease triangleは、「病原」と「宿主」植物が存在しているだけでは病気は起きず、「環境(および媒介者)」によって、病気が起きるかどうか、どの程度の病気が起きるかが左右されることを概念的に示しています。これに関して、「例えば、その関係に基づいた防除法を考えたとき、環境を変えて、結果的には病原を殺すことになるのでは?」というご質問がありました。病原を殺しても良いのですが、病原菌を休眠状態にする(アブラナ科野菜根こぶ病で土壌pHを上げる)、植物を病原菌に対して強くするなど、病原を殺さずに病気を抑えることは可能であると考えられます。

ベクター(媒介者)は昆虫だけか?
次回簡単にご紹介する予定ですが、物理的な媒介者(土壌粒子、水、風など)や生物的媒介者(ヒト、昆虫など)もあります。


10月17日クラス

質問と回答

水平伝搬と垂直伝搬の両方で伝搬される病原はあるか?
もちろんあります。水平伝搬は、病原の平面的な、言い換えれば同時期に病原が拡散していくことを示します。例えば、イネいもち病菌が胞子(分生子)によって広がっていくような場合です。一方、垂直伝搬は、主に次世代への伝搬を意味します。例えば、イネいもち病菌が種子に潜み、翌年病気を起こすような場合です。

病原の水平伝搬と垂直伝搬で防除方法に差ははあるのか?
上記のような水平伝搬と垂直伝搬の違いに基づいて異なった防除が行われます。水平伝搬に対しては病原の拡散などを防ぐために、環境条件に応じて(例えば胞子が飛びやすい気象条件など)防除薬剤を処理する、あるいは病原が到達する前に予防的に薬剤を処理する、媒介者(例えば昆虫)を殺すことが一般的です。一方、垂直伝搬を防ぐためには、健康な種子を作る、種子、球根、苗が健康であるかどうかを検定、消毒する、組織培養技術などをもちいて健康な苗を作ることなどが特徴です。

垂直伝搬は一回感染すると永久的か?
お応えするのが難しい質問です。「永久」を世代を超えてとすると、ウイルス病などでそのようなものがあります。従って、組織培養や接ぎ穂の温湯処理などでウイルスフリーの苗の育成をします。種子に潜む糸状菌病原の多くは、組織内部ではなく、子葉の表面などにいるとされています。発芽時に菌が成長を開始して、若い植物に感染、その個体を病気にし、ひどい場合は枯死させます。その上で作られる胞子などが新たな植物に伝搬し、そこで作られる種子がまた汚染する、というのが一般的な病原の種子伝搬経路のようです。従ってこれは永久とは言えないと思います。これを防ぐために、種子消毒や胞子飛散の防止対策を行います。

病原の土壌伝染はどのように防ぐのか?
土壌中に存在する病原の伝染を防ぐのは非常に難しいことです。よく行われるのが、化学薬剤(薫蒸剤など)、熱などで土壌を消毒し、病原(以外のあらゆる生物をふくめ)をなくす方法です。その他、土壌の環境を変える(例えばpHを変える、水分の調節など)によって病原の活動を抑えて伝染を防ぐ方法、病原に耐性の台木を用い、病原に感染してしまう目的の植物を穂木として接ぎ木をして栽培する方法などがあります。

「酵母」はどのような「菌」か?
基本的に単細胞で出芽や分裂で増殖する状態を「酵母」といいます。

最近の菌類の分類体系は系統関係を反映しているのか
講義の中でもご紹介したように、分類体系を生物の系統と合わせることは究極の目的ではありますが、現実的には不可能なことです。菌の最近の分類体系も系統関係との矛盾をできるだけなくす方向で提案されています。

Fusarium oxysporumFusarium moniliformeの分子系統的な違いはどれくらいなのか?
rDNA ITS領域の解析などでは、既存のあらゆる生物種の中で、最も近縁な2〜3種のうちに入る関係です。

菌は完全世代名と不完全世代名の両方を持つとのことだが、完全世代名を与えるメリットは?
完全世代名は有性生殖器官を含めた類似性に基づいた分類体系の中にあり、より系統を反映していると考えられます。一方、不完全世代名は、分生子や菌糸、菌核といった不完全世代(無性生殖)の特徴のみに基づいた分類体系の中にあります。そのため、系統関係をうまく反映するのが困難な場合がありました。例えば、胞子を作らず、菌核のみをつくる子嚢菌の種(Sclerorium cepivorum)と担子菌の種(Sclerotium rolfsii)が同属に入るといった矛盾が存在します。現在では、菌の学名は基本的に完全世代名とすること、不完全世代名は、完全世代が未発見で完全世代名を与えることができない(不完全世代名のみを持つ)菌と関係を少しでも分かりやすくするために使用されます。例えば、イネ馬鹿苗病菌Gibberella fujikuroiが不完全世代名Fusarium moniliformeを持つ関係で完全世代を持たないFusarium oxysporumと類似していることがわかりやすくなります。「完全世代名と不完全世代名を同じにしてはどうか」というご質問もいただきました。確かに、不完全世代名をなくそうという議論はあります。しかしながら、完全世代名と不完全世代名の分類基準が異なることから困難なのが現状です。2つの名前を持つことについて不便であると感じておられる方が多いようですが、このような基準によって2つの名前を持っていることを理解していれば、あまり不便を感じないのでは無いかと思っています。有性生殖をしない種がいる「菌類」の特徴を示しているようで、2つの名前を持つこと自体が興味深いことではありませんか。

子実体とは何か?
有性生殖器官を持ち、その結果生じる後代を生じる器官、とご理解下さい。すなわち、子嚢菌では2つの交配型細胞が有性生殖(交配)し、次世代である子嚢胞子をつくる過程が行われ、子嚢胞子を内包する子嚢をさらに内包する子嚢殻などの器官、担子菌では、担子胞子を形成する担子器を保持する「きのこ」が子実体に当たります。子嚢菌の子実体もかなり大きなものが存在し、子のう盤など、「きのこ」として理解されているものもあります。「きのこ」は菌糸が高度に縒りあつまった菌糸束から形成されます。

分化型とレースの違いは何か?
両者とも種以下の分類群です。種などによって分化型やレースを分ける基準が異なる、あるいは分化型やレースがない場合がありますので、一概にご説明することは困難です。Fusarium oxysporumの場合、宿主植物の種レベルの差によって分化型を分けています。さらに同一種の品種に対する病原性の差によってレースを分けています。ご注意いただきたいのは、このような小分類群の中には、特殊な注目すべき形質(例えば病原性)によって分けられおり、系統関係を反映していないものが多いことです。


10月24日クラス

質問と回答

有性生殖と擬有性生殖のどちらも行うことのできる菌はいるのか?また、それぞれの頻度は?
います。生活環の中で有性生殖を行う頻度は菌によって異なります。擬有性生殖の起こる頻度はかなり低いという論文がありますが、たくさんの胞子や菌糸をつくる菌にとって、多様性の維持のために擬有性生殖を利用するにはその低い頻度でも十分なのかもしれません。また、「擬有性生殖の進化したものが有性生殖か?」というご質問を戴きましたが、これは違うと思います。擬有性生殖は菌類に特有な生殖法であり、有性生殖は生物に普遍的な生殖法だからです。

擬有性生殖で2n+1の染色体を持つようになった細胞はずっとそのまま2n+1を維持するのか?
そのうち、余分な染色体を失い(メカニズムは不明)、2nになると言われています。また、「2n-1になった細胞はずっと2n-1のままか?」というご質問もありました。2n-1になってしまった細胞は、2nに戻ることは不可能です。体細胞分裂を繰り返す内に、低頻度で、「2n-1+1」と「2n-1-1」(異なる相同染色体であることに注意)の細胞ができ、少しずつ相同染色体を失っていき、最終的に「n」になるのが擬有性生殖のメカニズムで有ると言われています。

交配不完全性の菌類において、交配できないので遺伝的解析が不可能なはずなのに、どのようにして交配ー不完全のスイッチング機構の解析が可能なのか?
ごく最近まで、交配不完全性の菌の交配に関する解析は不可能でした。しかし、分子生物学的手法を用いて、近縁の交配能を持つ菌との比較によって、解析が可能になっています。例えば、不完全性菌の各菌株の交配型(1か2)を決定する遺伝子およびその領域は、近縁の交配できる種の遺伝子構造を参考に、PCR法で解析することが可能になりました。私たちが行っている、Fusarium oxysporumにおける不完全性の原因の探索に際しても、交配可能な近縁種であるGibberella fujikuroiの交配メカニズム解析と併せて進めています。

ハクサイ根こぶ組織1グラムに10億個もの休眠胞子が入っているのに驚いた。根こぶを除けば防除できるのでは?
もちろん、発病した根部のコブを土壌から取り除くことは圃場衛生面から、根こぶ病防除の最も基本的な対策です。しかし、コブが細根にも形成されること、コブが比較的軟腐しやすく、早期に土壌中に休眠胞子が放出されてしますこと、さらに、作業が大変なこと、等から、なかなか根こぶを完全に取り除くことはできません。

アブラナ科野菜根こぶ病が比較的低い土壌pHで多発する理由は?
残念ながら、情報を持ち合わせていません。


10月31日クラス

質問と回答

遊走子とは何か?
遊走子とは、胞子のうち、鞭毛を持ち、運動能力の有るものを言います。Phytophthora infestansの場合、胞子嚢の中に、無性的に形成される胞子が遊走子ということになります。ただし、P. infestansでは、無性的に形成される胞子嚢が遊走子を形成せずに、直接発芽する場合もあり、この場合は、胞子嚢=分生子と理解されますので、混乱しないようにご注意下さい。

Phytophthora infestansの胞子嚢が直接発芽するか、遊走子を形成する遊走子嚢になるかはどのようにして決定されるのか?
生物の形態形成にしばしば関与する三量体Gタンパク質βサブユニットが胞子嚢形成に関与する、あるいは、遊走子には菌糸などに比べて10倍もの遊離putrescineが含まれている(Appl Environ Microbiol 72:3350, 2006)などの報告がありますが、どのような条件が、直接発芽をするか、遊走子を形成するかの決定に係わっているのかについての文献は見あたりませんでした。菌糸内の糖などの濃度が関連している可能性も有ると思います。

ソラマメ火ぶくれ病が今後拡大する可能性は無いのか?
従来の限られた発生地でもソラマメなど宿主植物の栽培が減少しているようで、病気は無くなっていく方向に有ると思います。

「かすがい連結」はどのような時に形成されるのか?
講義の中でもご紹介したように、多核を持つ菌糸が伸長し、隔壁が形成されるときに、娘核の移行のために形成されます。配布したプリント(図)の、p. 1、図3をご参照下さい。clamp connection=かすがい連結です。講義の際、「かすがい連絡」と板書してしまったようですが、誤りですので、「かすがい連結」に修正をお願いします。

さび病菌はなぜたくさんの種類の胞子をつくるのか?メリットは?
講義の初めにお伝えしたように、「菌がなぜ胞子をつくるのか?」というような、ご質問には的確にお答えすることは困難です。今回戴いたご質問も、過去の講義でもよくいただいたご質問ですが、答えを持ち合わせておりません。生活環にあわせて見ると、受精をしたり、数(population)を増やしたり、宿主を交代したり、複相になったり、減数分裂したり、各胞子には何かの特徴があり、それがその種の生存に有利なのだろうと推論することは可能です。しかしながら、それは結果から見た推論であり、実際に、どうして他種類の胞子を作るようになったのか、その真実は不明です。図13の表をご覧いただくと分かるように、一部の種類の胞子を形成しないような菌もありますので、その差を生活環の差と併せて考えると何か興味深い仮説が立てられるかもしれません。

さび病菌には何故宿主交代をするものができたのか?
このご質問も、上のものと同様にお答えが困難な質問です。「宿主植物が無くなる季節に他の宿主上で生活できれば有利であるので」と申し上げることはできますが、証拠はありません。「コムギとメギを近接して植えると黒さび病はどうなるのか?」というご質問も戴きました。近接して植えると、病気がひどくなること(菌が飛散して宿主に到達する確立が高くなる)ことが推測されます。ナシの産地では、ビャクシンを植えないように求められるのも一つのヒントです。温室などで、コムギを一年中栽培し、そのそばにメギを植えておくとどうなるでしょうか?講義の際、夏胞子を「urediospore」と板書しましたが、誤りですので、「uredospore」に修正をお願いします。

さび病のように他種の胞子を持つものは防除が困難か?
さび病に対して使用する殺菌剤では、ステロールの合成系の阻害剤、呼吸系の阻害剤などがありますが、これらの作用性はどの胞子でも共通と考えられます。しかし、胞子の壁の厚さや構造によって、剤が胞子内部まで入りやすいかにくいか、などの差がある可能性が想定されます。そもそも、異種寄生で遠くまで胞子を飛ばすこと自体が防除を困難にしています。


11月21日クラス

質問と回答

トウモロコシ裸黒穂病菌を人工的に接種する場合にタイミングはあるのか?
メキシコなどで食べられている黒穂病罹病トウモロコシが人工的に接種して生産されているかどうかは知りませんが、もし接種するとしたらいつ接種するのが良いでしょうか?生活環(プリントの図)を参考に考えてみてください。出荷時に他の健康なトウモロコシに伝染するのでは?とのご質問もいただきました。もちろん、その可能性はありますが、通常、胞子が飛散する前の状態で収穫されているようです。

イネ紋枯病の防除法は?
一般には、殺菌剤の水面施用を行います。バリダマイシンAなど、紋枯病用の特効殺菌剤もあります。油の水面施用も以前学会などで有効性が報告されていますが、水質汚染や薬害の問題から実用的ではありません。

不完全菌類の分子系統解析などに基づく子嚢菌での位置づけは、後に完全世代が見いだされた場合に正しいことが確認されているのか?
事例はあまり知りませんが、イネいもち病菌、灰色かび病菌などでは問題が生じていません。

子嚢菌の2つの交配型とは何か?何故同じ型の菌株同士は交配しないのか?
各菌株の交配型遺伝子座の二型の対立遺伝子によって決定される交配に係わる型です。基本的には異なる交配型の株を認識して初めて交配(有性生殖)が開始されます。同じ型の菌株同士が交配しないのは、自家不和合性の様な現象です。その認識メカニズムについては、酵母で詳しく調べられており、交配型遺伝子によって制御されるそれぞれのフェロモンをフェロモンレセプターが認識してその信号を核に伝えることで交配挙動が起こることが分かっています。従って、異なる交配型の株が存在しないと信号が発せられず、交配挙動が開始されないと考えられています。

子嚢が裸生で形成されたり、子嚢殻中に形成されたりするのに意味はあるのか?
明確な証拠は有りませんが、裸より、子嚢殻に包まれている方が子嚢にとっては保護された状態であると思われます。従って、原始的な子嚢は裸であり、進化は子嚢を保護する方向に向かう(裸生子嚢→子のう盤上の子嚢→子嚢殻中の子嚢)と想定されます。実際に、分子系統解析でも矛盾しない結果を示しています(Nature 449:818 (2006))。「偽子のう殻とはなにか?」というご質問が有りました。偽子のう殻は、菌糸体に埋もれた状態の子嚢殻を特にそう呼びますが、最近は特に子嚢殻と区別しないこともおおくなっています。また、「閉子のう殻中の子嚢胞子はどのように飛散するのか?」とのご質問も戴きました。通常、閉子嚢殻は解裂して(壊れて)内部の子嚢胞子を飛散させます。学生実験で観察したコムギうどんこ病菌の閉子嚢殻を思い出してください。

イネ馬鹿苗病菌は自分でジベレリンを作るのか、宿主植物に生産を誘導するのか?
自らジベレリンを生産します。

カンキツ類青かび病菌(緑かび)病菌はどのようにして果実が発病に適した条件になることを察知するのか?
果実の物質的変化を関知すると言われています。また、「発病している隣の果実で発病しないのは、付着している殺菌剤のせいではないのか?」とのご質問がありましたが、これは、隣接する果実が潜在感染していないか、発病好適条件になっていないことが原因で、付着している農薬の効果ではありません。


11月28日クラス

質問と回答

絶対寄生菌は宿主植物が落葉するとどうなるのか?
一般には、植物残渣上に子嚢殻などの越冬器官をつくり、耐久します。春になって子嚢胞子を飛散し、柔らかい新芽などに再び感染します。

子嚢菌の子実体(子嚢殻など)が形成される条件は?
菌によって異なるようです。例えば、トウモロコシごま葉枯病菌、クワ裏うどんこ病菌などは、宿主植物が枯死する頃、気温や宿主植物の化学的変化を察して子実体を形成すると考えられています。これは前述の越冬のための手段であると想定されます。一方、菌核病菌などは、春になると子実体(子のう盤)を形成、子嚢胞子を飛ばして植物に感染するようです。

「胞子を連鎖して形成する」とはどういうことか?
胞子が長いチェーン状につながってつくられることを言います。この他に、擬頭状(ボール状にあつまって)形成される場合などがありますので、それらを区別するために使われることばです。

Fusarium oxysporum f. sp. lycoperisiciの「f. sp.」は何か?
ラテン語のforma specialis、英語ではspecial forma、日本語では「生理的分化型」です。以前ご紹介した「種」の下位の分類群の一つで、寄主範囲によって分けられています。

ナシ二十世紀に特異的に発生する菌(ナシ黒斑病菌)が存在するのは、菌の進化が早いことを示しているのか?
なぜ二十世紀を特異的に侵す菌が存在すると、菌の進化が早いと言えるのでしょうか?なお、植物と病原菌の共進化の速度は、耕地生態系では自然生態系より早いことが示唆されています。そのため、病気に対する抵抗性品種を育種しても比較的短期間で当該品種が無効化する場合があります。この他、ナシ黒斑病菌の宿主特異的毒素(HST)に関するご質問を複数戴きましたが、1月の講義中でやや詳しくご紹介する予定です。

フクジュソウ菌核病菌は、桑畑で発生するとのことですが、それ以外の場所では発生しないのか?
発生すると思います。ただし、フクジュソウの栽培自体があまり一般的でないようで、私はクワの株の間に植わっているものしか(もちろん、盆栽のようなものを除く)みたことがありません。

多氾性の病原菌はどのような植物侵入戦略をもっているのか?
植物の防御戦略と病原の侵入戦略の関係については1月にご紹介します。灰色かび病菌や菌核病菌のような多氾性の菌は、ペクチン質分解酵素などを多量に生産して迅速に植物組織を分解する場合が多いようです。


12月 5日クラス

質問と回答

細菌病に対する農薬がほとんど無いとのことであったが、抗生物質は使えないのか?
抗生物質とは、生物由来で、生物や細胞に対する効果を有する物質を言います。ご質問は動物用の抗生物質のことをおっしゃっているのだと思いますが、耐性菌の出現の危険性、残留性(農作物に抗生物質は一切残留が許されない)、植物組織への移行性、安定性、価格などから、動物用と共通の抗生物質農薬はほとんどありません。

リンゴ火傷病は日本に入っていないのか?
未侵入であるとされています。次週、侵入阻止を目的としたリーフレットをお見せします。

野菜類軟腐病菌は多氾性とのことだが、例えばスイカにもかかるのか?
スイカでの発生の記録は無いようです。ただし、メロンでは軟腐病が報告されていますので、報告が無いだけで、スイカでも病気を起こす可能性があると思います。

野菜類軟腐病菌はどこに潜んでいるのか?
生活環をごらんいただくと良いのですが、基本的には土壌中あるいは土壌中の植物残渣上で越冬します。

野菜類軟腐病が発生した圃場では、菌が越冬中にバイオキーパーを用いて土壌消毒を行えるのか?
生物農薬バイオキーパーの作用メカニズムの詳細は後日ご紹介する予定ですが、講義でご紹介したように、バイオキーパーは、(住む場所の)競合およびバクテリオシンによる抗菌によって病原菌を抑制します。ご質問は、このバクテリオシン産生能を利用して土壌消毒を行えるのか?という趣旨であると理解しました。土壌全体で効果が有るぐらい、生物防除資材を土壌中に投入して、増殖させられるかがポイントになると思います。バクテリオシンは、本来、バクテリアが自分の生活場所や栄養分を確保するために出すと考えられており、生物防除資材自体も他のバクテリアによって阻害を受けることが想定されますので、かなり困難なことであろうと予想されます。

バイオキーパーのスペクトラムは広いか?
野菜類軟腐病菌に限られているようです。後日ご紹介する、作用機作を併せて考えると良いと思います。


12月12日クラス

質問と回答

リンゴ火傷病の特効薬は無いのか?
前回もご紹介したように、細菌病に対して有効な薬剤は殆どないのが現状です。

青枯病に罹病したトマト茎を水につけると細菌の菌泥が出てくる理由は?また、菌泥には植物由来の物質なども含まれているのか?
青枯病菌は植物維管束特に道管内で増殖、充満して、道管の閉塞を起こし、萎凋症状を起こします。そのため、茎の切断面を水につけると、道管内に充満していた細菌が溢出してくるのが見えるのです。菌泥は基本的には細菌の細胞のみからなっていると思われます。

種子伝染をする病原細菌は、種子の薬剤処理によって防げないのか?
イネもみ枯細菌病菌、キャベツ黒腐病菌、タバコ野火病などが種子伝染することをご紹介しました。種子伝染している病原細菌を除去する(いわゆる消毒)には、薬剤処理(銅剤、抗生物質等)、次亜塩素酸による消毒、温湯処理、乾熱処理等の方法がありますが、種子の発芽率の低下、その後の生育に対する影響、完全に除去できるか、農薬の使用回数が増えるなどの観点からあまり完全な方法とは言えません(「種子伝染性病害の管理・研究・制御」農林水産省野菜・茶業試験場、2000年)。従って、病原細菌に汚染されていない健全な種子をつくることが最も基本的な防除法となります。また、「イネもみ枯細菌病の場合、汚染種子を取り除き、健康な種子のみ選抜して使用することはできないか?」というご質問をいただきました。もちろん、変色米になるほどの感染をしている場合は除去できますが、肉眼などで区別できない、あるいは、比重での選抜でも引っかからない程度の汚染をしている種子は取り除くことができず、それが伝染源となってしまいます。

タバコ野火病菌がタブトキシンを生産する理由は?
タブトキシンはスペクトラムの広い毒素です。すなわち、宿主植物に対する毒性のみならず、細菌などに対しても毒性を示します。そのため、他の細菌などとの競争を有利にする機能を持つと考えられています(植物病理学概論を参照下さい)。これを示すために、「タブトキシン不活化遺伝子を導入したタバコ上での野火病菌の増殖を観察する」という実験は有効かもしれません。また、「タブトキシン不活化遺伝子導入タバコ以外にも同様な不活化遺伝子を導入した細菌病抵抗性植物はあるのか?」というご質問を戴きました。キウイフルーツかいよう病菌が生産するファゼオロトキシン不活化遺伝子(これも同様に自己防御能を参考にとられました)導入キウイの作出が明治大学のグループで試みられています。また、細菌の細胞壁を分解する酵素を導入したジャガイモが軟腐病に強くなることが報告されています。

1884年にイネもみ枯細菌病が福岡で見つかったとのことだが、それまではなかったのか?
他のすべての病気がそうですが、多くの場合、すでに存在しており、その被害の拡大とともに研究が進められ、報告されます。従って、それまでも少しは発生していたのではないかと思われます。

かんきつ類かいよう病を防ぐのに、ハモグリガを防除するのは有効な手段か?
もちろん、病原の媒介者を防除し、伝染環を断ち切るのは有効な手段の一つです。

ジャガイモそうか病は表面だけで起こるのか?
初期に感染するのは皮目であり、軽い場合は表面だけの病徴になります。しかし、激しい場合には内部にまで病徴が及んでしまいます。

ジャガイモそうか病等に対する燻蒸消毒の場合、土壌の深くまで効果があるのか?
燻蒸だけでなく、熱水消毒などでも、処理が効果的に病害防除につながるかどうかは、病原の存在場所とガスがどこまで届くかによって決まります。ガス化する薬剤を使用して燻蒸するのは、できるだけ深く、広く到達することを期待したものですが、実際には上手く行かない場合も多く、消毒効果が不足する場合も有るようです。

ジャガイモそうか病は、ジャガイモ以外(非宿主)植物をしばらく植えればなくならないのか?
理論的には、土壌中での病原の生存期間よりも長期間に亘って非宿主植物を植え、その後健全な種苗を植え付ければ病害の発生は回避できることになります。しかしながら、現実的には長期に生存する病原を回避できるほど輪作作物の種類が無いこと、感染種いもからの持ち込みによって病気が発生することから、困難なようです。


12月19日クラス

質問と回答

マリーゴールドによるセンチュウ防除のメカニズムは?
こちらをご覧ください。

キタネグサレセンチュウに罹ったダイコンを出荷するかどうかはどのように判断するのか?
基本的に、根腐れ症状や褐変が少なければ出荷されていると思います。実際、問題は無いように思います。

植物はウイルスに対する免疫機構を持たないのか?
SAR(全身獲得抵抗性)など(1月にご紹介します)の免疫機構がウイルスに対する抵抗性を誘導する場合があります。

干渉作用とは何か?
「二種のウイルスを同時、または前後して同じ植物に感染させた場合、一方のウイルスの増殖が抑制される場合」を干渉といいます(久能ら、1997)。これを利用した弱毒ウイルスの利用については、1月に再度ご紹介する予定です。

ウイルスの生存(耐久)期間はどれくらいか?
植物ウイルスは、紫外線への暴露などによって壊れるとされます。核酸、特にRNAは比較的壊れやすい物質ですが、タンパク質に包まれたウイルスの生存(耐久)期間は、RNAウイルスでも環境中で数日から数十日、冷蔵庫などでは数年以上の場合もあると言われています。

弱毒ウイルスによるウイルス病防除のしくみが良く解らない
1月の講義の中で再度ご紹介する予定です。日本デルモンテのホームページ上に、弱毒キュウリモザイクウイルス接種トマトのメカニズムを紹介しているページ(http://www.delmonte.co.jp/garden/know/vaccine.html)がありますので、ご参考にされると良いと思います。

ウイロイドは1本鎖RNAとのことだが植物の中で簡単に分解されてしまうのでは?
ウイロイドは1本鎖RNAですが、環状であり、さらに内部に相補構造をとる2本鎖領域と、ループ状の1本鎖領域が交互に存在するため、棒状(50 nmほど)の構造をとります。このため、変成状態の1本鎖状態のRNAに比べて安定であるとされています。


 1月 9日クラス

質問と回答

宿主特異的毒素のレセプターは何をしているのか?
膜に存在するレセプターは、宿主特異的毒素と結合すると、その情報を細胞内に伝え、細胞の生理的変化を起こすと考えられています。多くの場合、この細胞の変化は、病原微生物を受容しやすくする方向となります。

動的抵抗性を予め発現することで、病気に強い植物を作れないのか?
微生物、エリシター、その他の物質が植物に動的抵抗性を誘導することが知られています。次週、全身抵抗性の誘導によって病害を防ぐ薬剤をご紹介する予定です。

PR-タンパク質は、病原(微生物)が来て初めて産生されるのか?
通常では殆ど産生されていませんが、微生物などを認識して生産が誘導されます。

植物ー病原微生物の共進化では微生物の進化の方が早いのでは?抵抗性遺伝子をもつ品種を育種してもすぐに変異した病原菌に侵されるのでは?
長年かけて苦労して作った抵抗性品種が病原のあらたなレースに侵されるようになること(抵抗性品種の無効化)はしばしば見られる現象です。


 1月16日クラス

質問と回答

植物ホルモンは発病因子としてどのような働きをするのか?
ひとつは、講義の中でもご紹介したように、病徴発現に関与する場合です。例えば、イネばか苗病での徒長にジベレリンが関与する、アブラナ科野菜根こぶ病や根頭がん腫病での瘤の形成にオーキシンが関与することが知られています。この他、オーキシンが細胞間の接着を弱くして病原が侵入しやすくすること、エチレンが抵抗性誘導に係わっていること、アブシジン酸が抵抗性を弱めること、などが知られています。

病原菌が薬剤に対する耐性を獲得する際、そのターゲット遺伝子だけが変異するのか?
基本的に、菌に限らず、すべての生物のゲノムではランダムな塩基の置換、欠損などの異常が起きます。その結果、形質の変化が現れる可能性があります。薬剤などに耐性の変異形質を持つものは、薬剤存在条件では有利ですから、選択されて残ることになります。ですから、基本的は、薬剤のターゲット遺伝子のみが変異しているわけではなく、偶然そこが変異したものが出現した際に残って、そのうち優勢になります。微生物は一般に多くの栄養体(胞子など)をつくりますので、変異体が出現してくる可能性が高くなります。

菌類メラニンの阻害剤を処理すると、いもち病菌はイネに侵入できなくなり、死ぬのでは?
確かに、イネ上では少なくとも生育が停止するようです。いもち病菌は腐生的にも増えることが可能ですので、イネ葉外ではメラニン合成阻害剤は選択圧に成り得ませんが、イネ上では選択圧になり、耐性菌が生じたひとつの原因かもしれません。

ストロビルリン系薬剤に対する耐性菌が速やかに出現した理由を再度聞きたい
こちらをご覧いただけると幸いです。

プラントアクチベーターによって抵抗性を誘導することで、植物に負担はかからないのか?
かかると思います。まず、プラントアクチベーター自体が植物にとっての負荷であるはずです。だからこそ、抵抗性が誘導されます。また、抵抗性が誘導されると、植物組織内ではサリチル酸やPR-タンパク質を初めとする物質の産生・蓄積が行われますので、それも植物にとって負担であると思われます。プラントアクチベータによる薬害がしばしば観察される(講義の中ではおはなししませんでしたが、、)のはそれが理由ではないかと考えられています。

プラントアクチベーターによって誘導される抵抗性に対する耐性菌は出ないのか?
PR-タンパク質などの抗菌性だけによって抵抗性になっている場合は耐性菌が出現してもおかしくはないと思います。しかしながら、誘導抵抗性は通常複数因子によっているようですので、耐性菌出現の可能性は低いと考えられています。

プラントアクチベーターで誘導した抵抗性は完璧に病原菌を抑えるのか?
植物のおかれた環境条件によって、抵抗性誘導の程度が異なるようです。また、殺菌性の薬剤ほどシャープな効果でないことも多いようです。ただし、長期間持続するのが特徴です。

「抗菌」は「殺菌」とどう違うのか?
抗菌は、菌の生育を抑える活性を表現するもので。菌の生育を停止する(静菌)などの作用も含まれます。


 1月23日 試験を行いました

試験は、以下の要領で行いました。
『試験に際しては、講義で配布したプリント類、ノート類、御自分で復習された紙類は持ち込み可とします。教科書、参考書などは持ち込めません。なお、試験前に講義のプリント・ノートおよび参考書を利用して勉強していただき、病原微生物に関する理解(記憶ではない)をしていただきたく思います。従って、細かい語句、名前等の情報についてはプリントなどの資料をご参照され、独自性のある答案をつくっていただくことを期待しています。』 図書館所蔵の教科書・参考書は、皆さんが閲覧できる機会を確保するために、長期間借り出ししないようお願い致します。なお、成績の評価は、シラバスにもありますように、「授業出席回数」+「試験評点」で行います。授業回数には試験日は含みません。また、授業出席回数が「7」以下の者は試験の成績にかかわらずDと評価します。詳しくは有江へお尋ね下さい。 


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