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2014年度 プレスリリース一覧

2015年1月30日 世界初、オイル高蓄積珪藻の全ゲノムを解読


世界初、オイル高蓄積珪藻の全ゲノムを解読
~ゲノム情報から明らかになるバイオ燃料生産性向上への糸口~

国立大学法人東京農工大学 大学院工学研究院 生命機能科学部門の田中剛教授を中心とする研究グループは、オイルを高蓄積する海洋珪藻Fistulifera solarisの全ゲノムを解読し、オイル合成の代謝経路を明らかとしました。この成果により、微細藻類(注1)のオイル蓄積メカニズムの解明に役立ち、今後、バイオ燃料生産性の向上が期待されます。なお、本研究は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)の支援を受けて行われたものです。


 本研究成果は、The Plant Cell(別リンクで開きます)に掲載されました。

図1 珪藻Fistulifera solaris JPCC DA0580株のオイル蓄積過程の顕微鏡画像。

緑色蛍光がオイルを示し、細胞内の多くの体積をオイルが占めることが明らかである。

現状:光合成を行う微細藻類が生産するオイルを用いたバイオ燃料生産は、二酸化炭素の排出削減効果が見込め、さらに食糧との競合が起こらない等の利点を有しています。これらのことから、社会の持続的成長を支える再生可能エネルギーの一つとして注目されています。世界各地でオイル生産に適した微細藻類が探索されており、本学工学研究院の田中教授らのグループでも、研究グループが保有する海洋微細藻類カルチャーコレクションの中から、最大のオイル蓄積性を示す微細藻類として、珪藻Fistulifera solaris JPCC DA0580株(図1)を獲得していました。これまで報告されている多くのオイル蓄積微細藻類は、細胞増殖が終了した後にオイル蓄積を行うのに対して、F. solarisは細胞増殖しながら、迅速に大量のオイルを蓄積することができます。そのため、世界トップレベルのオイル生産性を示しますが、その生物学的メカニズムは解明されていませんでした。

研究体制:本研究は、当該株の全ゲノム解析によりオイル合成に関わる遺伝子群の特定を目的とし、東京農工大学の研究グループが中心となり、フランスの高等教育機関グランゼコールの一つであるÉcole Normale Supérieureと産業技術総合研究所・ゲノム情報研究センター、及び電源開発株式会社の研究グループ等と共同し研究を実施しました。

研究成果:当初、微細藻類が異質倍数体ゲノムを有する事例は知られていなかったため、得られた遺伝子配列からゲノム構造を解析することは困難でした。東京農工大と産業技術総合研究所でバイオインフォマティクスの手法を適用しゲノム構造の再構築を試み、最終的に42対の染色体、約2万個の遺伝子を持つことを明らかとしました(図2)。更に、オイル合成に関与する重要な遺伝子を多数特定し、それらが活性化するパターンを解析しました。その結果、意外にも、当該株はオイルを蓄積しながらも、同時にその一部を分解し、細胞増殖のためのエネルギーを得ている可能性を突き止めました。この特徴的な遺伝子発現パターンが、当該株の迅速かつ大量にオイルを蓄積する性質を実現していると考えられます。また、微細藻類では初めて、異質倍数体ゲノム(注2)を持つことを発見しました。
 
今後の展開:本研究成果である全ゲノム情報の活用により、プロテオーム、メタボロームといったマルチオミックス解析に展開していきます。また、本研究で絞り込まれたオイル蓄積に関連した遺伝子を標的とした遺伝子組み換え珪藻を作出することにより、効率的なバイオ燃料生産を実現できると期待されます。

図2 今回解析されたFistulifera solaris JPCC DA0580株のゲノム構造の模式図。

注1)微細藻類
微細藻類は単細胞藻類の総称であり、原核生物のシアノバクテリア、真核生物の緑藻、珪藻など様々な生物群を含みます。近年では様々な有用物質生産に応用可能であるとして注目されている。中でも珪藻は、海洋の一次生産の約40%を担う重要な生物群であり、EPA(エイコサペンタエン酸)やスクアレンなどの有価物質生産に利用されています。
   
注2)異質倍数体ゲノム
ヒトなどを含む多くの生物のゲノム構造は、同質の染色体対のみで構成される。一方、異質倍数体とは、異なる染色体対が細胞内に共在するゲノム構造を指す。異質倍数体ゲノムはコムギやワタ、コーヒーノキなど、作物として重要な高等植物でよく観察される。より多くの遺伝子バリエーションを有するため、異質倍数体ゲノムを持つ作物は環境変化に強いとされる。


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