まず、「工学」は最も基本的な自然科学と直結しているので、 それらの新しい知見を取り込むことによって「もの」作りの範囲が どんどん拡大されています。例えば80年代にはトンネル現象という量子力学的な 現象を用いると原子レベルの構造を観察できるということが示され (走査型トンネル顕微鏡)、ノーベル賞の対象にもなりました。もちろん これは科学的な発見にとどまらず、すぐに工学の様々な分野で利用される ようになりました。
また、従来ほとんど「工学」と接点を持たなかったような分野が、 「工学部」の主要な分野の一つとして登場してきています。 その最もよい例が生物による「もの」作りです。 生物は、複雑で、柔らかく、安定性も十分ではありません。 これに対して、従来の工学の典型である機械は、硬く、壊れにくく、 できるだけ単純に作られています。 遺伝子工学などの生物による「もの」作りは、従来の工学の概念を ある意味で大きく変えてしまったと言えます。 このように「工学部」は、現代の大学の中で最もダイナミックで、 魅力の溢れたところなのです。
専門技術者を教育する場としても、工学部は大変重要です。 いわゆる景気の良し悪しに関わらず、専門技術者に対する社会の需要は 大きいのです。第一に、通信技術やコンピュータ技術などのエレクトロニクス 技術の進歩の結果、個人や企業の活動範囲が広がってきています。 そのような新しい科学技術の考え方や方法論を身に付けた専門技術者は 常に必要とされています。 第二に、日本の産業の現場では、各種の専用ロボットなどが生産を支えています。 そこで活躍するメカトロ技術(機械とエレクトロニクスやコンピュータを結合してもの) も、専門の科学技術者の存在が不可欠です。 第三に、地球の環境の改善や、クリーンエネルギー資源の開発などの 課題はますます大きくなりつつあります。 そこで、資源とエネルギーの過剰な消費を抑え、地球環境に優しい科学技術の 専門技術者が求められつつあります。第四に、環境のための科学技術を 突き詰めていくと、人間のための科学技術である医学や薬学へ つながっていきます。そして、それを支援するバイオテクノロジーの 専門技術者の養成は緊急に必要とされています。
私達の工学部は、四つの大学科を設置していますが、 それらは工学部における上記の教育の四つの方向に対応しています。 それぞれ、電子情報工学科、機械システム工学科、応用科学科、生命工学科です。
私達は、21世紀に向かって、とてもおもしろい研究をたくさんしています。 研究室の紹介を見ていただければ、それが納得できるでしょう。 その意味で私達の工学部はプロ好みの大学なのです。ただ、 現在社会では、「知名度」と「質」が必ずしも一致しないと言う 問題点がしばしば見られます。特に、日本では、大学を評価するときに、 教育と研究の中身だけでなく、外見としての「知名度」が優先される傾向が あります。私達、東京農工大学の工学部は、中身に自身を持っています。 ここに紹介した全ての研究から、私達の中身を読み取っていただければ 幸いです。
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