JST産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)共創プラットフォーム育成型 採択「光融合科学から創生する「命をつなぐ早期診断・予防技術」研究イニシアティブ」

2018年9月6日

 平成30年9月6日、科学技術振興機構(JST)による「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)共創プラットフォーム育成型」に、東京農工大学を幹事機関とし、参画機関(1大学、6企業)と共創提案した「光融合科学から創生する「命をつなぐ早期診断・予防技術」研究イニシアティブ」が採択されました。

研究領域名称 光融合科学から創生する「命をつなぐ早期診断・予防技術」研究イニシアティブ
領域統括 三沢 和彦 東京農工大学大学院工学研究院長
共創コンソーシアム名称 命をつなぐ技術コンソーシアム
実施期間 平成30年度開始 ~ 平成36年3月末日 終了予定
(FSフェーズ+本格実施フェーズ、プロジェクト最長は6年度)
幹事機関 東京農工大学
参画大学等 一橋大学イノベーション研究センター
参画民間企業 株式会社マルコム、神栄テクノロジー株式会社、三菱ガス化学株式会社、NapaJen Pharma株式会社、株式会社テヌート、ワイヤード株式会社

命をつなぐ技術コンソーシアムの概要

 命をつなぐ技術コンソーシアムでは、高齢化社会を迎えるにあたり、健康及び医療サービスへのニーズが増加している状況を背景に、実際の早期診断や予防に直結する、生命科学分野と獣医学分野の研究領域を5つのキーテクノロジーとして設定しました。既存の産業分野で共同研究を進めるのと並行して、新たな学術的挑戦として、物理学のカテゴリーの中でも異分野との親和性が極めて高い光科学により、これら生命科学分野と獣医学分野を基盤的かつ横断的に融合させます。領域横断的な融合分野を総合しシステム化することで、産業構造に大きな変革をもたらします。さらに、光融合科学から創生する「命をつなぐ早期診断・予防技術」を、国際標準化して世界に展開することで、QOL向上に貢献し、新たな市場を創出します。

 具体的には、東京農工大学の三沢教授は、生体細胞内における生体関連分子の分布と動態を対象に、その場で分子構造を同定しながら画像化する技術で世界最先端を走っています。特に、分子量が小さい低分子の蛍光顕微観察を行うには蛍光ラベルの方が大きくなり、可視化が困難でした。本技術を実用化した「コヒーレントラマン顕微鏡(注)」を用いれば、低分子の局在分布を生体中で画像化できます。実用上は、創薬あるいはスキンケアの分野において、薬剤の動態評価が行える標準的なツールとなっていく可能性があります。
 コヒーレントラマン顕微鏡の研究報告例が多数ありますが、従来のものは光学的セットアップが複雑であり、生命科学研究者が気軽に活用できる状況にはありません。一方、三沢教授が開発した機器は、単一のレーザービームを顕微鏡に導入するだけで計測が可能となるため、一般のユーザーでもハンドリングできるツールとなっています。本技術はすでに米国特許を取得しており、この発明をオープンイノベーションの骨格とします。
この革新的な機器を以下の5つのキーテクノロジーと組み合わせることで、ゲノム情報等を活用した医療、生活習慣病や認知症の予兆発見、ワクチン開発や薬剤耐性対策、AIや情報技術を利用したがん診断に関する新しい方法を世界に先駆けて提案します。
 
 キーテクノロジーとしては、ゲノム情報等を活用した医療を目指す「①エピジェネティクスセンシング」(課題代表者:池袋一典教授)「②生体恒常性破綻で生じる疾患の予測系開発」(課題代表者:渋谷 淳教授)、生活習慣病や認知症の予兆発見を目指す「③オプトリピドミクスと食由来栄養」(課題代表者:木村郁夫特任准教授)、ワクチン開発や薬剤耐性対策を目指す「④光科学に基づく感染症・疾病の未来予測と未然対策」(課題代表者:有江 力教授)、AIや情報技術を利用したがん診断を目指す「⑤がん細胞のイメージインフォマティクス」(課題代表者:田中 剛教授)の5つを設定します。それぞれのキーテクノロジーにより、既存の産業分野で企業との共同研究を行います。
 
 また、成果を具体的市場に普及するためには、成果の利用方法・評価方法を「国際標準化」して市場を拡大することです。本コンソーシアムでは、一橋大学が「国際標準化」実現のための社会科学的研究(課題代表者:江藤 学教授)を担当し、開発した技術を受け入れる市場を生み出します。この社会科学的研究との革新的な協働は、過去の自然科学系の研究開発プロジェクトでは見られない新規性と優位性を持っています。

 東京農工大学は、基礎研究から実用化までシームレスにつなぐ研究活動により、日本発の革新的な医薬品・検査キット・医療機器あるいは機能性食品等の創出に向けた研究開発を推進します。

(注)コヒーレントラマン顕微鏡
集光したレーザを試料に走査して画像を得るレーザ顕微鏡の一種。瞬間的に光るパルスレーザを試料に照射して分子振動を強制的に開始させ、そこにさらにもう1つのレーザを照射すると、分子の振動数の分だけ周波数がずれた新しい信号光が放出される。この信号光の周波数から分子固有の振動数を、信号の強さから濃度をそれぞれ測ることができる。染色が不要なラマン顕微鏡の中でも、特に高い感度を持つ次世代技術として注目されている。


<参考情報>

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